入江洋佑さん(広島市民劇場大手町事務所) |
坂口安吾は、いつの間にか自分たちのまわりを取り囲んでいる、いろいろな約束事を裸にして考えてみたらどうか。人間って何だと言うことをいった人。
みんなが仲良くしたらいい、ただ、だんだん小さく割っていてみると、世界があって国があって県があって村があって家があって、お前と私と2人っきりになった時にそんなに融和できるのだろうか、本当に。
一方が一生懸命尽くす、一方が尽くされるということは、片っ方は妥協していることじゃないか。
この作品のテーマはこれなんですよ。
本当に大好きになった女に、自分が大好きな山を捨てて尽くすだけ尽くすんだけど、もう尽くしきれなくなって、それじゃ俺は山へ帰るという。
今度は女の方が都を捨ててついて行く。結局どっちかが好きだと、どっちかが妥協しなきゃいけない。
そういう事をするのが人間だとしたら、れで良いのかという、つらい問いかけなんです。
これをみると、本当に人間の最後には、大事にしなければならないものは何だと考えさせられる。