2013年12月23日月曜日

満開の桜の花の下に、人間がいなければ

生首2=町田聡子 生首3=漆戸英司
東京演劇アンサンブル公演『櫻の森の満開の下』
パッと咲いて、パッと散る、開花の寿命は短いが、短いがゆえに潔よい散りぎわが、日本人の生きざまを象徴している。桜の美しさは、まさに日本の美そのものである。坂口は、その桜の花の下に、人間がいなければ怖しい景色になるというべつの発想をもって、この説話をこしらえた。

山賊は、鈴鹿山に住みつき、おおぜいの女を妻にしている。最後にさらってきた美女の言うままに、まえの女房たちを次々に殺していく。都に出ては、やはり女の言う通りに、金銀財宝を奪うばかりではなく、首のコレクションをはじめる。女の魔性(鬼)のとりこになった山賊が、だんだん自分の所業に疑いをもちはじめる。
(「1990年公演パンフレット「イメージ豊かに人間の魔性を問う問題作」藤田洋・演劇評論家」より)
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 『櫻の森の満開の下』広島公演(東京演劇アンサンブル)
 日時 2014年4月12日(土)19時開演
           13日(日)14時開演
 会場 広島県民文化センター (中区大手町一丁目)
 料金 2,999円(自由席)

2013年12月18日水曜日

亭主を斬り殺してわたしを掴みとったとき、お前のことはみんなわたしにわかったのだよ

1990 New York公演パンフレットより
女=真野季節 男=柳川光良

女 みんなはじめはそんなふうなことをいうのよ男は。
男 莫迦な! 俺はさっきからこの五体のなかでうずうずうごめいているものを、お前に受けとってもらいたいとうずうずしているんだ。
女 フフフ、なんだいうずうずばかりじゃないか。
男 そのうずうずがどういったらいいもんやら、俺にはうまく探し出せない。
女 バカだねお前は。麓の道でわたしの亭主を斬り殺してわたしを掴みとったとき、お前のことはみんなわたしにわかったのだよ。それをいまさら山賊のことばでもう一度わたしにつたえようなんて、ほんとに無駄なことだよ。
男 山賊のことばか。山賊のことばでなければいえないこともあるぜ、山賊の五体のなかのうずうずは、とてもお前にわかってはいまい。
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 『櫻の森の満開の下』広島公演(東京演劇アンサンブル)
 日時 2014年4月12日(土)19時開演
           13日(日)14時開演
 会場 広島県民文化センター (中区大手町一丁目)
 料金 2,999円(自由席)

2013年12月14日土曜日

広島市民劇場2月例会 文学座『くにこ』の公演情報

文学座公演 『くにこ』 ビラ
昭和4年11月28日 
東京の世田谷町若林町に
一人の女の子が生まれました。 
その子の名前は〝くにこ〟 
やがて、その女の子は 
物語の母になるのでした 

この物語は、一人の女の子が 
物語の母になるまでを描くものです。 
彼女が見つめていたものが 
彼女に染み込み、いつの間にか 
彼女自身となり、言葉や物語として 
あふれ出していく……。 

おかしくてやがて哀しい 
物語の母の物語。

作/中島淳彦 
演出/鵜山 仁
出演/塩田朋子 山本郁子 栗田桃子 太田志津香 鬼頭典子 上田桃子
       角野卓造 関 輝雄 亀田佳明

装置/石井強司 照明/金 英秀 音楽/川崎絵都夫 音響効果/望月 勲 
衣装/原まさみ 舞台監督/三上 博 演出補/所 奏 制作/矢部修治

広島市民劇場 2014年2月例会  文学座公演『くにこ』
アステールプラザ大ホール ・2月10日(月)18:30~ ・2月11日(火)13:00~ 
安佐南区民文化センター  ・2月12日(水)18:30~ ・2月13日(木)13:00~

2013年12月11日水曜日

ごうごうと渦巻く100キロもの桜吹雪、宙を舞う女など、観客の度肝を抜く広渡演出

 東京演劇アンサンブルは、今年6月にモルドバでのフェスティバルとシビウ国際演劇祭で上演した「桜の森の満開の下」を、27日から9月1日まで、東京・武蔵関のブレヒトの芝居小屋で上演する。

 劇団主宰で演出家の広渡常敏(2006年死去)が、師事した檀一雄のすすめで坂口安吾の小説を脚本化、演出した舞台。1990年の米ニューヨークを手始めに、海外公演を重ねてきた。広渡と共に舞台を作ってきた山賊役の公家義徳は、「ごうごうと渦巻く100キロもの桜吹雪、宙を舞う女など、観客の度肝を抜く広渡演出と、役者の身体性が絶賛されてきた。東京での公演はこれが最後になるので、多くの観客に見てもらいたい」という。
(2013年8月23日  読売新聞「海外公演成功の勢い、2劇団が凱旋公演」より)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/theater/20130821-OYT8T00874.htm

2013年12月7日土曜日

お前は淋しいってことがどういうことだか、わからないんだね?

女=原口久美子
男=公家義徳
女 いやいや、いやよ! お前のような山男が苦しがるほどの山坂を、どうしてわたしがあるけるものか、考えてごらんよ。

女 だめ! (男の首っ玉にしがみつく)わたしはこんな淋しいところにいっときもじっとしておれないの。お前の家のあるところまで休まず急いでおくれ、さもないとわたしはお前の女房になってあげないよ。こんな淋しい思いをさせるなら、わたしは舌を噛んで死んでしまうから。


男 さびしいってぜんたい、なんのことだ?


女 まあ! お前は淋しいってことがどういうことだか、わからないんだね? 淋しいということばを知らないんだね? 無理もない、お前のような山男には淋しいということばなんか入り用でないものね。まあいいわ、つまらないこと考えないでとっととおあるき。


(「『櫻の森の満開の下』脚本 広渡常敏」より)
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 『櫻の森の満開の下』広島公演(東京演劇アンサンブル)
 日時 2014年4月12日(土)19時開演
           13日(日)14時開演
 会場 広島県民文化センター (中区大手町一丁目)
 料金 2,999円(自由席)

2013年12月5日木曜日

広島市民劇場12月例会『その場しのぎの男たち』の公演情報

本日から東京ヴォードヴィルショー公演広島市民劇場12月例会『その場しのぎの男たち』が始まる。

    安佐南文化センター
       12月5日(木)18:30
       12月6日(金)13:00
    アステールプラザ大ホール
       12月9日(月)18:30
       12月10日(火)13:00

作/三谷幸喜
演出/山田和也

出演/佐藤B作 佐渡稔 石井愃一 市川勇
たかはし等 あめくみちこ 山本ふじこ 
大森ヒロシ 中田浄 まいど豊 京極圭 
玉垣光彦 奈良﨑まどか 村田一晃 小沼和
喜多村千尋 石井琴絵 平田美穂子 仲道泰貴 大迫右典
客演/山本龍二 角間進

スタッフ 美術/石井強司 照明/宮野和夫 音響/石神保 衣装/牧野iwao純子 
舞台監督/相川聡 制作/石井琴子、古城菜理、水渕歩知


明治24年、来日中のロシア皇太子ニコライを巡査が襲った「大津事件」を題材としている。
松方内閣、組閣5に目に起きた日本の運命に関わる大ピンチ。あの手この手と無い知恵を絞って編み出すその場しのぎの対策……。おもしろおかしく政治の世界を描く。

2013年12月4日水曜日

俳優の行為を挑発する これはもはや衣裳ではすまされない

男(山賊)=柳川光良 1990年公演パンフより
「舞台の衣裳はこれまでの長い間、登場人物の性格の「表現」として考えられてきた。人物の性格、その内面や劇構成や展開を「表現」する衣裳――だがぼくらは今では、衣裳は舞台で”着る”ものだと考えるようになった。演技が「表現」であるより俳優の「行為」であるように、俳優の着るという「行為」の対象としての衣裳。ぼくらの友人、北村道子は記号化されることのない行為の対象として衣裳をぼくらに提示する。あるいは強制的記号としての衣裳をぼくらにつきつけて、俳優の行為を挑発する。これはもはや衣裳ではすまされない一つのただならぬ事件に違いないのだ。」
(1984公演パンフレット「稽古場の手帳 広渡常敏 腐食する風景」より)
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 『櫻の森の満開の下』広島公演(東京演劇アンサンブル)
 日時 2014年4月12日(土)19時開演
           13日(日)14時開演
 会場 広島県民文化センター (中区大手町一丁目)

2013年12月2日月曜日

辺境性と地下性というマイノリティの魂によって、はじめて生きられる

広渡常敏 1984年公演パンフレットより
東京演劇アンサンブルの『櫻の森の満開の下』1965年(昭和40年)に広渡常敏により脚本化され、1966年3月に俳優座劇場にて上演されている。劇団名を「三期会」としていた頃だ。

1984年(昭和59年)6月にパルコ スペース パート3で、およそ20年を経て上演される。その時のパンフレットの文章「稽古場の手帳 広渡常敏 腐食する風景」の一部を抜粋して紹介する。

「――精神の危機におびえる不安のまなざしの中に浮かんだ風景の、なんとめくるめく光彩にみちていることだろう。これらの風景はたしかに一九二〇年代のものだ。耽美(たんび)の心も官能的なものへの憧憬(しょうけい)も、辺境性と地下性というマイノリティの魂によって、はじめて生きられる。坂口安吾の『桜の森の満開の下』もこのようにして眺められた風景の一つに違いないのである。坂口安吾は一九四七年にこれを書いたのだったが、精神の不安のなかで耽美(たんび)のファンタジーを探りとろうとした。この風景のなかで“風博士”安吾にとって世界を隔てる壁は半透膜となって融通自在、人間の心の襞(ひだ)のどんな揺れも露(あら)わに覗(のぞ)かれる。安吾はそこで山賊のことばでしか語れない生を仮構したのであった。」

2013年11月28日木曜日

新劇の役者さんはみんなつっこみばかりだからおもしろくないんじゃないかなあ_萩本

「同時代を生きる」第2号 1975年12月20日 東京演劇アンサンブル発行
1975年12月に発行された東京演劇アンサンブルの雑誌「同時代を生きる」。

250ページばかりの雑誌のほとんど最後に、この台本が掲載されていた。12ページの短いもので一気に読んだ。坂口安吾は読んだことがなかった。あの有名な写真とともに名前だけは知っていたが読んだことはなかった。

観たいという思いをずっともっていた。劇団と話す機会もあったが話題にすることはなかった。
それが突然、写真週刊誌「フォーカス」の見開きカーラーの記事となって登場した。いま調べてみると1984年のこと、その2年後に広島市民劇場の例会として県民文化センターで4ステージの公演を行っている。
中央部分を客席に張り出した舞台、圧倒される桜吹雪、今まで観る事のなかった世界観、いくつもの仕掛けが相まって舞台の吸引力は相当だ。その後、呉市や東京を含めて何回か見ている。
雑誌中程の「特集 ギャグの発見」20ページほどに萩本欽一、向井徳七、由利徹の三氏が登場する。当時なぜと思ったことは記憶している。
さっと読んでみると「ぼくはね、いい舞台とかいい番組とかっていうのは、どんな場合でもつっこみとボケってのがなきゃだめだと思うんですよ。新劇見てて時々思うんだけど、新劇の役者さんはみんなつっこみばかりだからおもしろくないんじゃないかなあ。」(萩本欽一)、
「こんな話し、やっぱり活字になってもおもしろくないんじゃないかなあ。新劇の戯曲ってのとは違うからねえ。それより今度ひまができたら、劇団へ出むいて行くから実演でよんでくださいよ。」(由利徹)などが目に付いた。

2013年11月26日火曜日

最後のチャンス

東京演劇アンサンブル公演
櫻の森の満開の下

坂口安吾 作

広渡常敏 脚本・演出
池辺晋一郎 音楽

2014年4月

12日(土)19:00開演
13日(日)14:00開演

広島県民文化センター

料金 2,999円

新たな創作のため
この公演を最後に
劇団はこの芝居の舞台装置等を
処分することを決めている