2014年3月20日木曜日

「女性とは何か?」、「肉体と精神」、「人間の悲しみと孤独」について私たちに語りかけてくる

フェスティバルHPより画像の部分
男 公家義徳
ルーマニアの『シビウ国際演劇フェスティバル2013』で発行されている“aplauze”マガジン1記事の日本語訳が東京演劇アンサンブルから提供があったので紹介します。

BEING LOST IN A FLURRY OF CHERRY BLOSSOMS
桜の森の満開の下で

阪本由貴

フェスティバル初日、誰もがこの特別な日に何が起こるのか興奮して待ちかまえていた。東京演劇アンサンブルは、この20周年記念を飾る最初の舞台として驚くべきオープニングをもたらしてくれた。
かれらのパフォーマンス『桜の森の満開の下』は、高校の体育館で行われた。

会場は壁もすべて黒幕で覆われ、多くの場所に照明が吊られ、片側には客席が、もう一方には美しいダークブラウンの木の舞台がプラットホーム(B舞台)とともに設置された。ここが学校の体育館とは想像もできない。ステージの真ん中から両側に引幕が開かれると、満開の桜の美しい全屏風が現れた。それはいきなり私たちを日本の風景へ連れて行った。

物語は大きな衝撃とともに始まる。一組の男女が、金屏風を破って出てくる。空から降りしきる幾千もの桜の花びらとともに。その男は桜の森にすむ山賊で、彼は神秘的で美しいけれど残酷な女をその夫から略奪した。山賊は女の美しさを崇め、その女は男に人びとを殺して生首を持ってこさせる。彼が女のもとを離れようと心に決めたとき、女は夜叉に変わる。夜叉の息の根を止めたとき、彼はそれがあの美しい女の死体だということに気づいた。桜の花びらは更に激しく降り、死体は消え、男はとり残される。そして桜の森に女の悲鳴が響く。

わたしはこのパフオーマンスを外国の人びとがどのように感じるのかにとても興味をもった。アレクサンドル(シビウで演劇の勉強をする20才の学生)は、「とても興味深い物語だった。役者と振付がよかった。日本語の上演にもかかわらずストーリーがわかった。ストーリーが観客の心に残るということは、演劇において最も大切なことだと思います。」フライデリケ(タイタニック劇場の28才の女優)「わたしにとって、これが初めてのアジアのパフオーマンスだった。美術はとても美しかったし、効果や演技は素晴らしかった。すべてが完璧なタイミングだった。扇風機を抱えた裏方の人たちさえ、この舞台にたいへん効果的だった。」チョン(ちょうど演出の勉強を終えたばかりの27才)は「わたしは、彼らのバイオレンスの表現方法が好きです。音楽は演技や踊りにぴったりで、話し方さえこの舞台に大きな効果を生み出していた。私は歌舞伎風の白塗りのダンスが気に入りました。パフオーマンスは魅惑的で、始まりから終わりまですごいインパクトで、どの瞬間も集中して観ることができました。」

満開の桜の下では恐ろしいことが起きるという伝説に基づいたこの物語は、「女性とは何か?」、「肉体と精神」、「人間の悲しみと孤独」について私たちに語りかけてくる。上の方から降ってくる何千何万という桜の花びらは、空中で渦巻き、舞台に積もる。色によるバイオレンスの表現の美しさ、日本の歌舞伎の白塗と美しいコンテンポラリーダンスの調和、そして役者たちの素晴らしい情熱が、わたしたちをシビウから違う世界へ、神秘的な桜の森の満開の下へ誘った。(2003/06/09) 
「SIBIU INTERNATIONAL THEATRE FESTIVAL 2013」「aplauze」より