東京演劇アンサンブル

 1954年(昭和29年)、東京俳優座養成所第三期生を中心に結成、劇団三期会としてスタートした。 
 1954年A・ミラー『みんなわか子』を鹿児島で旗挙げ公演。
 1957年集団創作『明日を紡ぐ娘たち』上演。演出の広渡常敏を中心に、紡績女子労働者と劇団との交流の中で創作、1957年新劇戯曲賞佳作賞受賞、現実の生活の中からリアルなものをつかみ出そうという仕事は、以来この劇団の基本的な姿勢となる。 

 ブレヒト劇の上演は、1958年『カルラールのおかみさんの銃』から始まる。『母』『コミューンの日々』『第三帝国の恐怖と貧困』など相次いで上演。1967年には、劇団名も東京演劇アンサンブルと変更。 
 ブレヒトからの影響を強く受けながら、創作戯曲の上演も数多い。1967年には木下順二『蛙昇天』、宮沢賢治『グスコー一ブドリの伝記』等の脚本演出で演出・広渡常敏は文化庁芸術選奨新人賞第一回の受賞者となる。また劇団は、紀伊國屋演劇賞第二回目の団体賞を受賞。

 以後、W・ギブスン『奇蹟の人』、W・シェイクスピア『真夏の夜の夢』、木下順二『オットーと呼ばれる日本人』等の作品で、演劇鑑賞団体、労演、市民劇場運動の発展に貢献、全国各地で沢山の旅公演を行う。 
 1979年から現在の拠点劇場・東京練馬の「ブレヒトの芝居小屋」での公演が始まる。B・ブレヒト『ガリレイの生涯』『コミューンの日々』『セチュアンの善人』『男は男だ』『都会のジャングル』等連続して上演。劇団員全員で建設した芝居小屋は、何もないブラック・ボックス。その空間を、俳優も観客も生きることで、未知の自分に出会うことを期待させる雰囲気を持っている。ここで、現代に生きるブレヒトの斬新な魅力的な舞台を次々と生み出す。商業主義的メジャー志向に傾く現代演劇の流れに逆らって、マイノリティの視点から時代の核心をとらえるたくさんの作品が上演された。『セチュアンの善人』で紀伊國屋演劇賞主演女優賞受賞、舞台美術はプラハ国際舞台美術展で銀賞を受賞している。 

 その他、W・シェイクスピア『テンペスト』、A・ウェスカー『かれら自身の黄金の都市』、円形舞台、十文字舞台など新しい舞台形式を創り出しながらの上演は、作品に新たな生命を加えたと高い評価を受ける。殊にチェーホフ『かもめ』は、1973年.1980年.1987年3回にわたって上演、チェーホフ戯曲の秘密を探りとろうとしている。 
 1988年からは「ブレヒトの芝居小屋企画」として公演を毎月行い、殊に岸田國士作品の連続上演、ホルヴァート作品の日本初演など、注目を浴びている。 

 また、学生のための演劇鑑賞教室も、1965年以来全国の学校で行い、『走れメロス』『銀河鉄道の夜』など文化庁移動芸術祭で数多く取り上げられている。 
 こどものための作品も毎年新作を上演、各地に巡演。代表作に『目をさませトラゴロウ』等がある。 
 1990年には、坂口安吾『桜の森の満開の下』が、文化庁舞台芸術交流事業の作品として選ばれ、ニューヨーク ラ・ママ アネックス劇場で上演される。 
 東京演劇アンサンブルの仕事は演出家・広渡を中心に、創立35年来常に時代の変革の精神と呼応し合い、斬新な演劇形式を求め続けてきている。現在、団員70名。年間ステージ数300。全国の劇場、小劇場、野外の牧場や高原など、多様な場所で公演をしている。
(1990年公演パンフレットより)
http://www.tee.co.jp/