2014年4月4日金曜日

自分たちが風のごとくに自由で、さくらの花のように完壁であるがために、社会の定めや自らの弱点と闘う

「キシノウ・ジャーナル紙」より
イリナ・ネヒト(Irina Nechit)


広渡常敏演出、東京演劇アンサンブルによる「桜の森の満開の下」の舞台が、キシノウに結晶化した形でやって来た。この舞台は、生き生きとした新鮮さを保持しつつ、叙事詩的な日本の美学を魔法に近い領域にまで高め、そこに観客を引き込むことに成功した。

作品に出て来る男(公家義徳)と女(原口久美子)は、情熱や優しさ、哀れみを遥かに超えた絶対的な自由についての物語りを私たちに提示するのである。二人は、自分たちが風のごとくに自由で、さくらの花のように完壁であるがために、社会の定めや自らの弱点と闘うのである。

「日本文化の日々」は、山のさわやかな空気と人間の性につての真実、それはしばしば残酷であり、血に飢えており、天使に転身しうる可能性を秘めた悪魔を持っていることを語る勇気をキシノウに齎(もたら)してくれた。ウジェーヌ・イオネスコ劇場で土日に「桜の森の満開の下」の舞台を観た人々は、舞台の幻覚のようなイメージと、とくに神話に命を再び吹き込み、一過性のこの世の中の危険と予測不可能な現実を生きることへの恐怖を乗り越える力を与えてくれる役者の力を、長い時間忘れることはないであろう。(2013年6月)


“日本フェスティバル”
FESTIVALUL INTERNATIONAL AL ARTELOR SCENICE, BITEI-2013